旧約聖書におけるメシア預言
レジュメ(2)2025年6/14
エバは長男カインが、レメクはノアがメシアであると期待した
2007年フルクテンバウム博士セミナー
『旧約聖書におけるメシア預言』
THE MESSIAH OF THE OLD TESTAMENT
By Dr. Arnold Fruchtenbaum
(テキスト)
ご購入はこちらから(CD)(テキスト)
フルクテンバウム博士のメッセージを
中川健一牧師がわかり易く通訳してくださった
セミナーの内容を基に作成しています。
以下
青色の聖句はセミナーでとりあげられた聖句箇所です
(セミナーでは新改訳3を使用しているので説明文では新改訳3)
(このHPでの引用聖句は原則 口語訳聖書 旧約聖書1955年改訳 新約聖書1954年改訳 日本聖書協会)
「新改訳3」とは聖書 新改訳 ©1970,1978,2003 新日本聖書刊行会
「新共同訳」とは聖書 新共同訳©共同訳聖書実行委員会j
「新改訳2017」とは聖書 新改訳2017 ©2017 新日本聖書刊行会 からの引用です
黒色の文章がセミナーの説明文
緑色の文章はHP編者による補足説明
紫色の聖句は引用聖句や参考聖句
(英語訳は基本American Standard Version ASV)
茶色の文章はDr. Arnold G. Fruchtenbaum『A MESSIANIC BIBLE STUDY FROM ARIEL MINISTRIES』MBS012 THE MESSIAH OF THE OLD TESTAMENT翻訳メモからの補足説明です
興味のある箇所はリンク先もご覧になってみてください。
紙の聖書「新改訳2017」はこちらをどうぞ
旧約聖書におけるメシア預言
イントロダクション
Ⅰ.律法
A.「女の子孫」
セミナーテキスト2ページ(4/15)
Ⅰ.律法
モーセの律法
A.「女の子孫」
創世記3:15
創世記3章は人類が罪を犯す箇所
罪を犯したのちにその罪をいかに処理したらいいかということが当然問題になってくるので
最初のメシア預言が登場する箇所であると予測できる
注目してほしい重大なこと
最初のメシア預言が語られた相手はサタンだということ
創世記の3:15
創 3:15 わたしは恨みをおく、
おまえと女とのあいだに、
おまえのすえと女のすえとの間に。
彼はおまえのかしらを砕き、
おまえは彼のかかとを砕くであろう」。
(以下断りがなければ聖句は口語訳)
Gen 3:15 and I will put enmity between you and the woman, and between your seed and her seed: he shall bruise your head, and you shall bruise his heel.
ここで四つのポイントが挙げられている
①サタンと人類の女性との間に敵意(新改訳3)が置かれるということ
②その敵意はずっと継続しサタンの子孫と女の子孫との間に敵意が存在し続ける
③メシアのかかとはサタンの頭を踏み砕くようになる
④サタンが反撃して女の子孫のかかとに噛みつき若干の傷を与える
この預言の背景はイスラエルあるいは中東で毒蛇があらわれた時に毒ヘビがどのようにして人間に襲いかかるかという絵
中東で毒蛇は普通頭が三角形
その毒蛇を見つけた時に三角形の頭の上にかかとをボンと乗せて地面にそれをこすり付けるようにして頭を砕く
これが中東での毒蛇の殺し方
ここでメシアの踵がそのサタンの頭に向かってボンと降りてくるが
その時にサタンはメシアのかかとにかみつき(新改訳3)反撃をし少しの傷を与える
かかとがかみつかれているがメシアのかかとはなおも降りてきてサタンの頭を踏み砕く(新改訳3)
ここで大事なこと
メシア(救い主)というお方が
「女の子孫」(新改訳3)という名で紹介されていること
実はこのメシアが女の子孫と呼ばれるのは聖書の一般原則からは外れている
旧新約聖書の系図を見ると
必ず男系をとおして子孫がどのようにつながったかが書かれる
女性の名前が登場する場合
挿入句のように女性が紹介され
男系の系図そのものの本流にはあまり関係がないような形での紹介になる
女系が出てくる場合
その女性の名前ではなく女性の夫の名前がそこに書かれる場合が多い
エズラ2:61,ネヘミヤ7:63は例外的な系図
エズ 2:61 祭司の子孫のうちにはハバヤの子孫、ハッコヅの子孫、バルジライの子孫があった。
バルジライはギレアデびとバルジライの娘たちのうちから妻をめとったので、その名で呼ばれることになった。
ネヘ 7:63 また祭司のうちにホバヤの子孫、ハッコヅの子孫、バルジライの子孫がある。
バルジライはギレアデびとバルジライの娘たちのうちから妻をめとったので、その名で呼ばれた。
1.預言の内容
創世記3:15の預言ではメシアが非常にユニーク
それは男系ではなくて女系つまり「女の子孫」と言う名前を受けてメシアが出てくるという意味で非常に例外的な非常にユニークな存在であると予感できる
実はその「女の子孫」という名前がなぜ使われているかは後ほど(Ⅱ.預言書で)学ぶ
イザヤ書7章でメシアが処女から生まれるという預言が出てくるまでははっきりとわからなかった
イザヤ書7章になってようやく処女降誕が見えてくる
イザヤ書7章
イザ 7:14 それゆえ、主はみずから一つのしるしをあなたがたに与えられる。
見よ、おとめがみごもって男の子を産む。
その名はインマヌエルととなえられる。
創世記3:15で男の子孫ではなく「女の子孫」と言われている理由がイザヤの預言によってようやく理解できるようになる
ここにいる私たちは一人残らず人間の父と母を持って生まれてきている
ところがメシアの人間性に関しては人間的な母がいるだけで父はいない
これが「女の子孫」という言葉が持っている内容
「女の子孫」と呼ばれているメシアにあって全人類の贖いが完了していくことがイザヤに入って明確になってくる
黙 12:9 この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された。
黙 12:15 へびは女の後に水を川のように、口から吐き出して、女をおし流そうとした。
黙 20:2 彼は、悪魔でありサタンである龍、すなわち、かの年を経たへびを捕えて千年の間つなぎおき、
ヘブル2:14~18
ローマ16:20
黙示録20:10
ヘブル 2:14 このように、子たちは血と肉とに共にあずかっているので、イエスもまた同様に、それらをそなえておられる。
それは、死の力を持つ者、すなわち悪魔を、ご自分の死によって滅ぼし、2:15 死の恐怖のために一生涯、奴隷となっていた者たちを、解き放つためである。
2:16 確かに、彼は天使たちを助けることはしないで、アブラハムの子孫を助けられた。
2:17 そこで、イエスは、神のみまえにあわれみ深い忠実な大祭司となって、民の罪をあがなうために、あらゆる点において兄弟たちと同じようにならねばならなかった。
2:18 主ご自身、試錬を受けて苦しまれたからこそ、試練の中にある者たちを助けることができるのである
ロマ 16:20 平和の神は、サタンをすみやかにあなたがたの足の下に踏み砕くであろう。
どうか、わたしたちの主イエスの恵みが、あなたがたと共にあるように。
黙 20:10 そして、彼らを惑わした悪魔は、火と硫黄との池に投げ込まれた。
そこには、獣もにせ預言者もいて、彼らは世々限りなく日夜、苦しめられるのである。
2.この約束の最初の「響き」エコー創世記4章~6章
ここで一つの疑問は
では創世記3:15の預言は
その当時の人たちにどのように理解されたのだろうかということ
a.創世記4:1
特にその預言を聞いていたエバはその内容をどう理解したのだろうかということが興味の焦点になる
創世記4:1
創 4:1 人はその妻エバを知った。
彼女はみごもり、カインを産んで言った、
「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。
人とはアダム
今私(F師)が持っている英語の聖書はいろいろ訳がある中でも比較的良い方の訳
その訳を見ると~”I have gotten a man with the help of Jehovah.(ASV)
直訳すると
「私は、ヤハウェの助けによってひとりの男子を得た」
この英語の聖書は主の助けによっての「の助けによって」という部分がイタリックになっている
ヘブル語の原文にはないのだがそれを挿入しておかないと意味がはっきりわからないので翻訳チームが挿入しましたよというしるし
日本語の場合は難しい
日本語の聖書は「【主】の助けによって」とほとんど同じコンセプトで訳しているが
日本語のイタリックはないので挿入したとは見えていない訳し方をしている
口語訳:「わたしは主によって、ひとりの人を得た」。
新共同訳:「わたしは主によって男子を得た」と言った。
新改訳3:「私は、【主】によってひとりの男子を得た」と言った。
新改訳2017:「私は、【主】によって一人の男子を得た」と言った。
少し文法的な話で恐縮だが
古典ヘブル語では翻訳できない言葉がある
動詞があり動詞の目的語がある
目的語とは動詞の働きかけの対象になるもの
動詞の目的語だと示す為に前にくっつく言葉があるが
これは訳すのが難しい
あえて言えば日本語では「を」という言い方
男の子を得たという「を」という言い方
ヘブル語では「エット」という言葉
これは訳すべきではなく
目的語だということを示している言葉
それで今ヘブル語で何て書いてあるか説明すると
私は ひとりの男の子を 得た エット ヤハウェ
つまりひとりの男の子を得た。ヤハウェを得た。
という男の子とヤハウェとが並列している文型
創 4:2a 彼女はまた、その弟アベルを産んだ。
この「アベルを」という前にもエットはついているので
創 4:2a 彼女は、それからまた、弟アベルを産んだ。
(新改訳3)
それからまた 彼女は エット アベル 産んだ
という文型で
4:1と4:2は同じ文型
エットというのがついている
創6:10
創 6:10 ノアはセム、ハム、ヤペテの三人の子を生んだ。
セム、ハム、ヤペテという言葉の前にもエットという言葉がついている
何々を生んだ。目的語を表すエットという言葉
それらを前提にもう一度創世記の4:1をヘブル語の原文に即して読み直すとこうなる
~「私は、【主】によってひとりの男子を得た」と言った。
(新改訳3)
エバはこう言っている
私は ひとりの男子を 得た
これは人間 自分の息子
そして
私は ヤハウェ【主】を 得た
つまり神 救い主
そういう原文になる
エバは創世記3:15をこう理解した
神が人となり私たちを救ってくださる
そういうメシアがでるということを彼女は創世記3:15から理解した
確かにエバが考えた理解 彼女の神学はあっている
メシアは神であり人であるお方として登場する
しかし彼女がその預言を適用した適用の仕方が間違っていた
なぜならカインこそつまり最初の息子がメシアであると彼女はここで誤解しているから
b.創世記5:28~29
誤: 5:21
正: 5:28
創 5:28 レメクは百八十二歳になって、男の子を生み、
5:29 「この子こそ、主が地をのろわれたため、骨折り働くわれわれを慰めるもの」
と言って、その名をノアと名づけた。
ノアは特別な神の救いの計画を実行する人物として神さまから選ばれている
29節
創 5:29 彼はその子をノアと名づけて言った。
「【主】がこの地をのろわれたゆえに、私たちは働き、この手で苦労しているが、この私たちに、この子は慰めを与えてくれるであろう。
(新改訳3)
父レメクはノアが主が約束されたメシアであるという希望をここで告白している
レメクは創世記3:15の「女の子孫」というお方がノアではないか?
ノアがアダムによってこの地にくだった呪いを取りのけるメシアであるという希望をレメクは持った
もちろんノアを神さまが特別な方法で用いることは当たっていた
またアダムによって地上にもたらされた呪いをメシアが取り除けてくださることも当たっていた
しかしエバと同じように適用は違っている
ノアはメシア自身ではなかった
ユダの手紙14~15
洪水は1656年A.H.(ヘブル暦)に起こった。
ユダ 1:14 アダムから七代目にあたるエノクも彼らについて預言して言った、
「見よ、主は無数の聖徒たちを率いてこられた。
1:15 それは、すべての者にさばきを行うためであり、また、不信心な者が、信仰を無視して犯したすべての不信心なしわざと、さらに、不信心な罪人が主にそむいて語ったすべての暴言とを責めるためである」。
c.創世記6:1~4
創 6:1 人が地のおもてにふえ始めて、娘たちが彼らに生れた時、6:2 神の子たちは人の娘たちの美しいのを見て、自分の好む者を妻にめとった。
6:3 そこで主は言われた、
「わたしの霊はながく人の中にとどまらない。
彼は肉にすぎないのだ。
しかし、彼の年は百二十年であろう」。
6:4 そのころ、またその後にも、地にネピリムがいた。
これは神の子たちが人の娘たちのところにはいって、娘たちに産ませたものである。
彼らは昔の勇士であり、有名な人々であった。
神の子ら(新改訳3)と言われる存在が人の娘たちと結婚をし始める箇所
神の子ら(口語訳では神の子たち)
英語では the sons of God
ヘブル語ではブネイ・エロヒム或いはベネイ・エロヒム
神の息子たちという言葉
この神の子らという言葉が旧約聖書で(新約ではなく)使われた場合は必ず天使をさす
その天使とはいい天使の場合も堕落した天使の場合もあり両方とも神の子らという言葉
神学者たちは普通
神の子ら the sons of God は天使のことを指すという点で皆一致しているが
ある人たちが創世記6章だけはそのルールが適用できない例外だと主張する
しかしそのような例外を設ける良い解釈学上のルールというのは何もない
つまり何の理由もなくここだけは例外だと言っている
ここで起こっていることを聖書に書いてあるとおりに釈義するとこういうこと
サタンが
ここでは神の子らと呼ばれている堕落した天使たち(悪霊ら)に
人間の姿をとるように命じ人間の女と雑婚結婚をして
人間ではない
ここではネフィリム(新改訳3)と言っている特殊な存在の子どもを増やすように仕向けているのがこの箇所
ネフィリム(口語訳ではネピリム)という言葉は巨人を意味しているのではなく堕落した者という意味
ネフィリムは人間以上の能力を持っているが必ずしも身体が大きいというわけではない
しかしこの時代、皆さんご存知のように洪水が起こりこの堕落した天使たちを完全に或る場所に閉じ込めたということがおこった
ここで疑問は
ではなぜサタンが堕落した天使たちを用いて人間の娘たちと結婚させネフィリムという超人間的な存在を地上に増やそうとしたのかその動機
創世記3:15は誰に向かって語られた預言?
サタン
ということは
サタンは女からメシアが来ることを理解しているわけで
ここで人間の娘と結婚させるというのはサタンが考えている策略だとわかってくる
サタンは自分が誘惑して罪を犯させたこの女からいつかメシアが誕生するとその時に理解した
創6章で起こっているのはその預言が成就しないために人類の中の女の子孫を堕落させてメシアが生まれないようにしているサタンの策略の一部
もし神さまが介入なさらなければサタンのこの策略は目的どおりに実現した可能性がある
創6章のこの今読んだ記事は創3:15のメシア預言という文脈の中で理解し
サタンがメシアが登場しないように女の子孫を堕落させた試みであると考えるべき
ここまでの創世記の現在までの学びで分かった点は
メシアは女の子孫と呼ばれ人類の中の女性から出現するというところまで分かった
しかしその女性がどういう女性であるか?
どういう民族で
どういう家系であるか
ということはまだこの段階ではわかっていない
それが創世記3:15女の子孫という言葉が示していること
結論:メシアは人類の中から出現する。
メシア預言(3)2025年6/28へ
Ⅰ.律法 B.「アブラハムの子孫」創22:18
このセミナーの内容はこの本に書かれています。
アーノルド・フルクテンバウム博士著/佐野剛史訳
『メシア的キリスト論ー旧約聖書のメシア預言で読み解くイエスの生涯ー』
ハーベスト・タイム・ミニストリーズ出版部