千年王国レジュメ(16)2018年4/28
何世紀にも渡る民族紛争の原因は、弟に対する腹違いの兄の敵対心と、弟に対する双子の兄の憎悪l
クリスチャンが描くヤコブ像と随分異なるへブル語聖書のヤコブ像とは
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フルクテンバウム博士のメッセージを中川健一牧師がわかり易く通訳してくださったセミナーの内容を基に作成しています。
以下、青色の聖句はテキストでみていく聖句です。
紫色の聖句は2回目にでてきた聖句または参考聖句です。
緑色の聖句や文章は補足説明です。
黒色の文章がセミナーの説明文です。
興味のあるところはリンク先もご覧になってみてください。
「千年王国The Millennium」と「メシア的王国The Messianic Kingdom」の意味は全く同じです。
異邦人とはユダヤ人以外の人のことをさします。
The Gentiles in the Messianic Kingdom
セミナーテキスト50ページ
C.アラブ諸国
The Arab States
詩篇83:4 彼らは言っています。
「さあ、彼らの国を消し去って、
イスラエルの名が
もはや覚えられないようにしよう。」
83:5 彼らは心を一つにして悪だくみをし、
あなたに逆らって、契約を結んでいます。
83:6 それは、エドムの天幕の者たちとイシュマエル人、
モアブとハガル人、・・・
今回の学びは詩篇83:1〜8の前奏曲
「c.アラブ諸国」を理解するための背景として次の二つのことを理解しておきましょう。
① イシュマエルとエサウという二人の人物からイスラエルに対する敵対心が起こってきた
② 聖書はイスラエル人とアラブ人の間に継続的な敵対心が存在すると言っている
創世記12:1〜3
創 12:1 【主】はアブラムに仰せられた。
「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。
12:2 そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、
and I will make of thee a great nation,
あなたを祝福し、
あなたの名を大いなるものとしよう。
あなたの名は祝福となる。
12:3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、
あなたをのろう者をわたしはのろう。
地上のすべての民族は、
あなたによって祝福される。」
ユダヤ人の歴史は聖書ではここから始まっている
アブラハムから新しい国をつくると神さまは約束された
創世記10章
ノアの3人の息子(セム、ハム、ヤペテ)から70の異邦人たち(諸国の民)がでてくる
しかし、この70の国々から(すぐに)メシア(救い主)となる人が誕生するのではない
メシアが誕生する新しい国(イスラエル):
アブラハム、イサク、ヤコブのラインからでてくる
ユダヤ人の歴史:創世記12章1~3節から
アラブ人の歴史:創世記12章10~11節から
創12:10〜11
創 12:10 さて、この地にはききんがあったので、アブラム(のちのアブラハム)はエジプトのほうにしばらく滞在するために、下って行った。
この地のききんは激しかったからである。
12:11 彼はエジプトに近づき、そこに入ろうとするとき、妻のサライ(のちのサラ)に言った。
「聞いておくれ。あなたが見目麗しい女だということを私は知っている。
アブラハムは、神さまの召命に応答して入った約束の地で非常に激しい飢饉にあった
彼の信仰は、神さまにいかなる時にも信頼するという状態では未だなかった
飢饉ではないエジプトに下り生き延びることにした
彼には非常に美しい妻サラがいた
アブラハムは、妻サラの美しさがエジプトで評判となり自分は殺され妻を奪われるのではないかと恐れた
そこでアブラハムはサラに私の妹だ、私は兄だと言ってくれ、と依頼する
腹違いの妹なので確かに半分は当たっているが、彼女が妻であることを隠そうという意図があった
創世記12:15
創 12:15 パロの高官たちが彼女を見て、パロに彼女を推賞したので、彼女はパロの宮廷に召し入れられた。
アブラハムが恐れていたことが現実に起こる
パロがサラの美しさを聞き自分のハーレムに招き入れる
創世記12:16
創 12:16 パロは彼女のために、アブラムによくしてやり、それでアブラムは羊の群れ、牛の群れ、ろば、それに男女の奴隷、雌ろば、らくだを所有するようになった。
花嫁料:通常は花嫁の父親が、父親が亡くなっている場合は花嫁の兄が受け取る
女奴隷はこの花嫁料の一部だった
アブラハムの嘘が明らかになり、エジプトから追放され再びカナンの地に戻ってくる
16章
創世記12章と16章の間は10年あります。
創16:1
創 16:1 アブラムの妻サライは、彼に子どもを産まなかった。
彼女にはエジプト人の女奴隷がいて、その名をハガルといった。
この段階でアブラハムに子供が与えられるという約束は未だ成就していない
ここ16章に至るまで神さまはサラが約束の子を産むという明確な指示は未だ与えていない
サラが産むのは17章になって初めてでてくる
サラだと言われなくてもアブラハムの唯一の妻サラから産まれると当然考えるべきだが、子供がないサラは当時の習慣に従ってある計画をたてる
当時の習慣、考え方:もし正妻が子を産まない場合は女性の召使をその夫に与え、その子供により名を残していく
創世記16:1にサラにはエジプト人の女奴隷がいて、その名をハガルといった。とあります。
質問:
これまでの文脈で、一体いつサラがエジプト人の女奴隷を手に入れたのでしょうか?
答え:
創世記12章のあの出来事(前述)が起源になっています。
一つの失敗が次のより大きな失敗につながっていくという事例がここに見られます。
創16:4
創 16:4 彼はハガルのところに入った。
そして彼女はみごもった。
彼女は自分がみごもったのを知って、自分の女主人を見下げるようになった。
サラが夫にハガルを与え、ハガルがアブラハムの子供を宿す
みごもったハガルはみごもらない自分の女主人サラに対して優越感を持ち、見下げるようになった
サラ自身も応酬し、最後はハガルが追放された
創16:7
創 16:7 【主】の使い the angel of Jehovah は、荒野の泉のほとり、シュルへの道にある泉のほとりで、彼女を見つけ、
ハガルが荒野に逃げた時に、そこで【主】の使いと出会う
【主】の使い:旧約聖書では一般的な天使のことではなく特別なお方
第2位格の神であるお方が人間の目に見える形であらわれる場合の言葉(受肉前のキリストのこと)
【主】のみ使いは更にその子をイシュマエルと名づけなさい。と言った
創16:12
16:12 彼は野生のろばのような人となり、
その手は、すべての人に逆らい、
すべての人の手も、彼に逆らう。
彼はすべての兄弟に敵対して住もう。」
そのイシュマエルという息子の特徴が4つ語られ、イシュマエルの子孫に受け継がれる
イシュマエルの特徴
①
「野生のろばのような人となり」
シナイ半島或いはイスラエル南部の荒野の野生のろばは放浪しています。
イシュマエルとその子孫たちはまさに遊牧生活をします。
過去2,3世紀でアラブ人たちの多くは都市に定住するようになりましたが、ベドウィンは今も遊牧生活です。
②
「その手は、すべての人に逆らい、」
荒野を放浪している間に異なった部族に出会うと、一般的傾向としてはそこで戦いをいどみます。
③
「すべての人の手も、彼に逆らう。」
襲われた人たちは次はより組織化した復讐戦を展開します。
基本的には攻撃的性格、それに対して復讐がかえってくるパターンです。
イスラエルは建国以来65年この原則をいつも経験しています。
アラブ人たちがイスラエルに軍事攻撃、テロ攻撃をしかけるとイスラエルは組織化した反撃戦を繰り返しより大きなダメージを与えようとします。
④
「彼はすべての兄弟に敵対して住もう。」
ヘブル語では
1. 隣同士、隣人として住む
2. 敵対心をもって住む
この2つの意味があります。
イサクの子孫(イスラエル)とイシュマエルの子孫(アラブ人)は隣同士に住みます。
しかし、イシュマエルに属する人々(アラブ人)はイサクの子孫たち(イスラエル)に対して常に敵対心を抱きます。
これが何世代、何世紀にも渡り続いている両民族の紛争の原因です。
創世記21章
イサクがうまれる
創21:8
創 21:8 その子は育って乳離れした。
アブラハムはイサクの乳離れの日に、盛大な宴会を催した。
アブラハムは当時の習慣に従いイサクの乳離れの日(当時は3歳から5歳位の間)に盛大な宴会を催した
これは通常は喜ぶべき楽しいお祭り
創21:9
創 21:9 そのとき、サラは、エジプトの女ハガルがアブラハムに産んだ子が、自分の子イサクをからかっているのを見た。
しかし、その中に一人だけそのお祝いの雰囲気を破壊する人物がいた
それがイシュマエル
イサクをからかっていた
この時のイシュマエルの年齢は17歳から20歳の間位で相当知恵がついています。
ヘブル語で「イサク」と「からかっている」という言葉とは同じ語源からでている言葉です。
中川師による異訳:彼はイサクをイサクっていた。
イサクという名前をとってそれをあざけっているというのがここのポイント
このことが原因で、(イシュマエルの母、エジプト人の女奴隷)ハガルと(イサクの異母兄)イシュマエルは追放され荒野をさまようようになる
創21:21
創 21:21 こうして彼はパランの荒野に住みついた。
彼の母はエジプトの国から彼のために妻を迎えた。
イシュマエルはパランの荒野、シナイ半島の或る部分に住みついた
母ハガルは自分と同じ民族から妻が来るようにとエジプトから息子イシュマエルの妻を迎えています。
現在のエジプトは(紀元7世紀にアラブ人が侵入し)ほとんどセム系です。
しかしこの聖書時代エジプト人はハム系でした。
歴史的記録をみるとハム系のエジプト人はセム系のイスラエル人に非常に敵対的な態度をとっていました。
イシュマエルが結婚することにより、セム系アブラハムの血をハム系にしていく力学が働いています。
・・・・・・・・・
大雑把に言うと
セム系ーユダヤ、アラブ系
ハム系ーアフリカ系
ヤペテ系ーヨーロッパ、アジア系
・・・・・・・・・
アラブ人が自分たちの民族の父と仰いでいる二人の人物:
イシュマエルとエサウ
イシュマエル(アラブ人の父)とイサク(神さまがアブラハムと結んだ契約の継承者)は
異母兄弟でした。
エサウ(アラブ人の第2の父)とヤコブ(同上、のちのイスラエル)は両親が同じ、しかも
双子です。
創世記25章
エサウが最初にうまれる
長子の権利:神さまが約束する契約を継承する権利
兄エサウ:長子の権利を持ちながらも霊的なことには全く関心を示さない人物
弟ヤコブ:長子の権利は持たないが霊的な祝福を追い求め、神さまのご計画の中心にいたいと願った人物
キリスト教の歴史ではヤコブは非常に悪い印象で語り継がれています。
例)
あざむく奴、ずるい奴、ずる賢い奴といったイメージ
しかし創世記を読むとヤコブが犯した罪はひとつであり、父親をあざむいたことだけです。
それも彼が自分でしたいと思ったのではなく、母にそそのかされた内容です。
聖書の注解書を読むと、ヤコブは欺瞞に満ちた人物であり、その性格はヤコブの子孫のイスラエル人ユダヤ人にも引き継がれているというような解説がなされています。
しかし聖書が描くヤコブ像は、クリスチャンが描くヤコブ像とは全く異なります。
創世記25:27
創 25:27 この子どもたちが成長したとき、
エサウは巧みな猟師 a skilful hunter 、野の人となり、
ヤコブは穏やかな人 a quiet man となり、天幕に住んでいた。
*「エサウは巧みな猟師」と書かれています。
注解書では出て行って家族のために食事を集めてくる人という描き方ですが
巧みな猟師:創世記の文脈では評価する言葉ではなくネガティブな言葉
創世記10章にでてくる(力ある猟師)ニムロデという人は巧みな猟師で非常に否定的な人物です。
この一家の伝統的な職業は羊飼いですが、エサウは外に出て行ってます。
*ヤコブは「天幕に住んでいた」とあります。
天幕に住んでいた:ポジティブな表現で、父、祖父の仕事を継承していたわけです。
羊飼いは天幕に住むのです。
ヘブル語の一番優れた英語訳だと思われる聖書でも、ヤコブに関して既に偏見があるのでへブル語から英語に訳す時に言葉の選び方がおかしくなっています。
英語聖書
ASV訳:Jacob was a quiet manヤコブは静かな人だった
日本語聖書
新改訳3、新改訳1017、口語訳、新共同訳:ヤコブは穏やかな人
へブル語聖書:穏やか、静かという言葉ではなく「完璧な人」「完全な人」という意味です。
ノアはその時代の完全な人であったという時に使われたのと同じ言葉です。
創6:8 しかし、ノアは、【主】の心にかなっていた。
6:9 これはノアの歴史である。ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。
あるいはヨブに関して、彼は完璧な人だと言った時の言葉です。
ヨブ 1:1 ウツの地にヨブという名の人がいた。
この人は潔白で正しく、神を恐れ、悪から遠ざかっていた。
もちろん完璧といっても罪がないという意味ではありません。
神に対して持っている心の姿勢が正しいという意味です。
エサウが何の獲物もなく帰ってきた時、ヤコブがレンズ豆のスープを煮ていて、エサウがそれを欲しがりました。
そこでヤコブは、長子の権利をくれたらこれをあげるから誓いなさいと言います。
ヤコブはここで非常にずるい方法でエサウと取引していると普通言われるのですが、それは32節a見てくれ。死にそうなのだ。を額面通りに受け取り過ぎているのです。
エサウは誇張して言っています。
イサクの家庭は非常に裕福な家庭ですから、もしこの時にエサウがあと2,3歩歩んで隣の天幕に入ったならばそこに召使いがいていくらでも食べ物をくれるのです。
ここでエサウは、ヤコブが料理しているレンズ豆の煮物を食べたいと駄々をこねているのです。
そして一杯の煮物で長子の権利を売り渡します。
このような評価がくだされています。
創25:34
創 25:34 ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えたので、エサウは食べたり、飲んだりして、立ち去った。
こうしてエサウは長子の権利を軽蔑したのである。
Esau despised his birthright.
これは単なる取引ではなく、エサウが霊的祝福を全く軽蔑し軽く扱ったということです。
しかし、長子の権利とは売買できるものではありません。
(創25:23 で「兄が弟に仕える。」と出産前の母リベカに【主】が告げたように、神さまはヤコブが契約の継承者となることを生まれる前から決めていました。)
創世記27章
族長の祝福が与えられる
ヤコブはここで間違ったことをしたと批判されます。
創27:36 エサウは言った。
「彼の名がヤコブというのも、このためか。
二度までも私を押しのけてしまって。
私の長子の権利を奪い取り、今また、私の祝福を奪い取ってしまった。」
しかしヤコブが取引により長子の権利を手にいれたことからこの話が始まりました。
ですから族長、つまり父の祝福を得る権利は今やヤコブにあるのです。
ここではヤコブが父の祝福を奪おうとしているのではなく
逆にエサウが父の祝福を奪おうとしているのです。
兄のエサウは霊的祝福には関心がないのですが長子の権利の祝福をもらえば物質的に祝福されるので、欲しがっているのです。
ヤコブの罪:
長子の権利を奪っている罪ではなく
父をあざむいているという点
前述したように、ヤコブはそのことを母にそそのかされてやっています。
母リベカは、父方祖母サラがしたのと同じ間違いをしています。
女性は、神さまの計画が成就するためには「私がやらなきゃいけない。」と思い込む・・・
母が全部整えてその結果ヤコブが父からの祝福を受けました。
創27:41
創 27:41 エサウは、父がヤコブを祝福したあの祝福のことでヤコブを恨んだ。
それでエサウは心の中で言った。
「父の喪の日も近づいている。
そのとき、弟ヤコブを殺してやろう。」
エサウは、父がヤコブを祝福したあの祝福のことでヤコブ(のちのイスラエル)を憎んだとあります。
このエサウがアラブ人の第2の父になります。
アブラハムのあと6人の息子(母親はアブラハムのそばめケトラ)はイエメン或いはサウジアラビアに行き、ベドウィン人たちになりますが、アラブ人の中心はイシュマエル及びエサウの子孫たちです。
そして、イスラエル人とアラブ人の敵対心のルーツはこの二人イシュマエルとエサウにあります。
セミナーででた質問:
ヤコブの性質について「押しのける者」(創27:36エサウのせりふ)という風に考えていました。
それとヤコブが完璧な人、完全な人だということはどのように調和できますか?
答え:
ヘブル語でヤコブという名前はかかとをつかんで生まれてきた「かかとつかみ人」という意味しかありません。
創25:26 そのあとで弟が出て来たが、その手はエサウのかかとをつかんでいた。
それでその子をヤコブと名づけた。・・・
生まれた時に兄エサウのかかとをつかんででてきました。
一般に考えられているようにヤコブという名前に自動的に否定的な意味が含まれているのではなく、母の胎内にいた時に双子の弟ヤコブが兄エサウから権利を奪おうと策略を練っていたわけでもありません。
ですから、ヤコブは完璧な人であったという表現とその名前が矛盾するわけではありません。
完璧な人:罪がないという意味ではありません
例)
ダビデー神に向かって正しい心の姿勢をもち、神と心がひとつになった人ですが姦淫と殺人の罪を犯した
ヤコブという名前がへブル語で否定的な意味をもつわけではありません。
例)
イスラエルでは子供にヤコブという名前をつける
フルクテンバウム博士にヤコブというおじさんがいる
聖書の文脈の中で名前がどのように使われているか注意深く学んでいきましょう。
千年王国レジュメ(17)2018年(5/2)5/26
Ⅴ千年王国における異邦人 C.アラブ諸国 前半へ