■この手紙が書かれた背景と手紙の内容
ローマ帝国からの独立の機運が高まる中、愛国主義的な同胞から、ユダヤ人信者たちは迫害を受けていました。
エルサレムの神殿に近いユダヤ地方の教会の中では、この迫害が収まるまで、いったんユダヤ教の祭儀に戻ろうという動きが出始めていました。
この動きに対して著者は、警告を発するためにこの手紙を書きました。著者は、手紙の前半で、メシアがどれほど優れたお方であるか、ユダヤ教の三本柱である「天使」「モーセ」「アロンの祭司職」と比較します。そして、後半では、前半で学んだことを信仰生活に適用して、具体的な勧めをします。
手紙の読者は、迫害を受ける中で背教を考えている信者たちです。今、彼らに必要なのは、信仰による忍耐です。そこで著者は、11章で信仰による忍耐を発揮した旧約聖書の信仰者たちの手本を語ります。ここでは、手本となるひとりひとりについて、短く簡潔に要点だけがきびきびと書かれています。これはもちろん、読者に旧約聖書の知識があることを前提にしているわけですが、同時に、この手紙が背教の間際にある信者たちに宛てた緊急のものであるという空気が伝わってきます。
■前回までの流れと今回の内容
創世記に記録された最初の殉教者であるアベルから始めて、順次、旧約聖書の信仰者たちを見てきて、分裂後の王国時代における預言者の群像に進み、最後にバビロン捕囚期の預言者のひとり、ダニエルを取り上げました。
本日は、11章の結論部分です。
11章で私たちの手本として挙げられてきた旧約時代の信仰者たちは、みな、信仰を通して神から認められました。しかし、彼らは神の約束の成就を見ることなく、死んでいきました。なぜ、神はそのことをよしとされたのでしょうか。
それは、神が、旧約時代の信者たちと新約時代の信者たちを、ひとつに合流して、両者が共に約束の成就を見るように、計画しておられるからです。へブル人への手紙11章40節はつぎのように記しています。
「神は、私たち(新約時代の信者)のために、さらにすぐれたものをあらかじめ用意しておられたので、彼ら(旧約時代の信者)が私たちと別に全うされるということはなかったのです。」
「さらにすぐれたもの」、「全うされる」とは、どういうことでしょうか。今回の学びの中で、この2つの重要なことばの意味が明らかとなります。
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