■この手紙が書かれた背景と手紙の内容
ローマ帝国からの独立の機運が高まる中、愛国主義的な同胞から、ユダヤ人信者たちは迫害を受けていました。
エルサレムの神殿に近いユダヤ地方の教会の中では、この迫害が収まるまで、いったんユダヤ教の祭儀に戻ろうという動きが出始めていました。
この動きに対して著者は、警告を発するためにこの手紙を書きました。著者は、手紙の前半で、メシアがどれほど優れたお方であるか、ユダヤ教の三本柱である「天使」「モーセ」「アロンの祭司職」と比較します。そして、後半では、前半で学んだことを信仰生活に適用して、具体的な勧めをします。
手紙の読者は、迫害を受ける中で背教を考えている信者たちです。今、彼らに必要なのは、信仰による忍耐です。そこで著者は、信仰による忍耐を発揮した旧約聖書の信仰者たちの手本を語ります。ここでは、手本となるひとりひとりについて、短く簡潔に要点だけがきびきびと書かれています。これはもちろん、読者に旧約聖書の知識があることを前提にしているわけですが、同時に、この手紙が背教の間際にある信者たちに宛てた緊急のものであるという空気が伝わってきます。
■今回の内容
へブル人への手紙11章32〜40節では、ギデオンやバラク、サムソンやエフタといった士師たちの群像が取り上げられています。
本日は、エフタです。士師記には、女預言者デボラも含めると13人の士師が登場します。エフタはその中で、9番目の士師です。
「遊女の子である」、「ごろつきが集まって来て、彼といっしょに出歩いた」といった彼の生い立ちや、外敵と戦っただけではなく、エフライム族と内戦となったこと、さらには自分のひとり娘を戦勝と引き換えに犠牲にささげたという誤解、などによって、エフタについては、一般的にはよく思われていないのでしょうか、あまり取り上げられることのない士師です。
しかし、へブル人への手紙だけでなく、Ⅰサムエル12章11節でも代表的な士師の一人として、エフタの名を挙げています。
エフタには、どのような信仰の手本が見られるのでしょうか。
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