■前回までの概観
- 著者と読者: 著者は、誰かは特定できませんが、第二世代のユダヤ人信者です。読者は、エルサレムに近いユダヤ地方の諸教会に集う第二世代のユダヤ人信者たちです。
- 執筆の時期: 紀元64年から66年の間と推定されます。紀元66年はユダヤ人たちがローマ帝国に対して反乱を起こした年で、その反乱は4年後の紀元70年、エルサレム陥落、110万人のユダヤ人の死によって終わります。
- 時代の背景: 手紙が書かれた時期は、反乱勃発を前に、ユダヤ社会の異分子である教会に対しして迫害が激化したころです。動揺した信者たちの中には、いったんユダヤ教に戻りエルサレム神殿の祭儀に参加して迫害を避けようという妥協案が出てきました。
- 手紙の目的: 動揺するユダヤ人信者たちに向けて、著者は、ユダヤ教の三本柱である「天使」「モーセ」「レビ族アロンの家系の祭司による神殿祭儀」と比較して神の子であるイエスの優位性を教え、ユダヤ教に戻るなら、エルサレム陥落に巻き込まれて肉体の死というさばきを招くと警告するために、この手紙を書きました。
- テーマ(1:1〜3): 著者は、あいさつ文なしで、冒頭から本題に入り、中心テーマを「御子の優位性」と示しました。緊迫した時代の雰囲気が感じられました。
- 天使に優る御子(1:4〜2:18): 三本柱との比較は、まず天使についてです。御子は、神であり同時に人であるお方「神‐人(God-Man)」です。
- 神であれば、天使よりも上であるのは当然です。この点は、旧約聖書から7か所を引用して証明されました。
- 人としての立場でも御子は、十字架の死を経て天使に優るお方となられました。この点は、メシアの王国での統治権とメシアによる救いという二つの観点から説明されました。
- この教えの途中で、第一の警告が語られます。第一区分の神学的理論は始まったばかり、まだ第一の比較「天使」を教えている途中ですが、そこまでに語ったことだけでも、御子がどれほど優れたお方かがわかるので、信仰を見失うことのないように、という警告です。
■今回の内容
今回は、ユダヤ教三本柱の二番目「モーセ」との比較です(3:1〜6)。モーセは、神の家(神の民)であるイスラエルの中にあって、神の家のためにつかえた忠実な「しもべ」です。これに対して、御子は、家を建てたお方、また、「子」としてその家の「主人」であり、相続者です。ゆえに御子はモーセに優るお方です。
ここで著者は、第二の警告(3:7〜4:13)を述べます。前半は、荒野の旅40年の歴史を引いてモーセに反抗した民が荒野で死んだことと読者たちの現状を重ね合わせて、まして御子を否定するなら肉体の死というさばきを受けるという警告、後半は神の安息に入るように、という勧めです。
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