□はじめに・・・学びの目的
私たち、新約の聖徒は、誰に対して祈るのでしょうか。「天にいます私たちの父よ」という呼びかけで始まる「主の祈り」(マタイ6章)は、主イエス・キリストが教えてくださった祈りのパターンであり、祈りの対象は、父なる神であることは、よく知られています。
しかし、「イエス様」という呼びかけで祈る人、三位一体の神のそれぞれの位格をお呼びして「父なる神様、イエス様、聖霊様」と祈る人、さらには、とくに聖霊の満たしを求めるときなどに「聖霊様」と祈る人など、さまざまです。
何が正しいのでしょうか。あるいは、どういう呼びかけであっても、真心をこめて神様に祈るのなら、呼びかけは違ってもかまわないのでしょうか。
そこで、本日のテーマは、「誰に対して祈ればよいのでしょうか」と題して、聖書が祈りについて記す箇所で、誰に対して祈っているかが示されている箇所を見ていきます。
□イエスが公生涯の中で、祈りについて教えた箇所
マタイ6:6 祈るときは、・・・あなたの父に祈りなさい。
マタイ6:9 だから、こう祈りなさい。「天にいます私たちの父よ・・・
マタイ7:7〜11 求めなさい。そうすれば与えられます。・・・天におられるあなたがたの父が、どうして求める者たちに良いものを下さらないことがありましょう。
ヨハネ14:13〜14 あなたがたがわたしの名によって求めることは何でも、それをしましょう。父が子によって栄光をお受けになるためです。あなたがたがわたしの名によって何かを【わたしに】求めるなら、わたしはそれをしましょう。
【 】の部分は、原文にはない。祈りにおいて求める先は、父なる神であることが前提。
「わたしがそれをしましょう」=使徒たちが父なる神にイエスの名によって求めるなら、子なる神であるイエスは父の栄光のために働いてくださる。
ヨハネ15:16 あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何でも、父はあなたがたにお与えになる・・・
ヨハネ16:23 まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたが父に求めることは何でも、父は、わたしの名によってそれをあなたがたにお与えになります。
ヨハネ16:24〜27 わたしはあなたがたに代わって父に願ってあげようとは言いません。
□使徒の働きに記録された祈り
使徒3:6〜9 ナザレのイエス・キリストの名によって、歩きなさい。・・・人々はみな、彼が歩きながら、神を賛美するのを見た。
使徒4:24 これを聞いた人々はみな、心を一つにして、神に向かい、声を上げて言った。「主よ。あなたは天と地と海とその中のすべてのものを造られた方です。
ここの「主」は、父なる神を意味している。
使徒4:29〜31 主よ。いま彼らの脅かしをご覧になり、あなたのしもべたちに、みことばを大胆に語らせてください。御手を伸ばしていやしを行わせ、あなたの聖なるしもべイエスの御名によって、しるしと不思議なわざを行わせてください。」彼らがこう祈ると、・・・
使徒8:22 だから、この悪事を悔い改めて、【主】に祈りなさい。
ここの【主】は、別の写本では「神」。すぐ前の21節で「あなたの心が神の前に正しくない」とある「神」と同じことば。
8:23では、魔術師シモンが、「私のために主に祈ってください。」と願っている。ここはいずれの写本も「主」。
8:14「神のことば」、8:25「主のことば」とあるので、「主」は父なる神を指すとも取れます。使徒4:24では、父なる神を指していたので、ここもそのように考える方がよいと思います。
使徒27:35 彼はパンを取り、一同の前で神に感謝をささげてから、・・・
□パウロの書簡に記録された祈り
ロマ15:6、30〜33 私たちの主イエス・キリストの父なる神をほめたたえるためです。
ロマ16:25〜27 あなたがたを堅く立たせることができる方、知恵に富む唯一の神に、イエス・キリストによって、御栄えがとこしえまでありますように。
Ⅰコリ1:3 私たちの父なる神と主イエス・キリスト
Ⅰコリ1:4 私は、キリスト・イエスによってあなたがたに与えられた恵みのゆえに、あなたがたのことをいつも神に感謝しています。
Ⅱコリ1:3 私たちの主イエス・キリストの父なる神、慈愛の父、すべての慰めの神がほめたたえられますように。
Ⅱコリ1:10〜11 神は、これほどの大きな死の危険から、私たちを救い出してくださいました。・・・なおも救い出してくださるという望みを、私たちはこの神に置いているのです。あなたがたも祈りによって、私たちを助けて協力してくださるでしょう。
Ⅱコリ1:20 神に約束はことごとく、この方(神の子キリスト・イエス)において「しかり」となりました。それで私たちは、この方によって「アーメン」と言い、神に栄光を帰するのです。
Ⅱコリ2:14 神に感謝します。神はいつでも、私たちを導いてキリストによる勝利の行列に加え、至る所で私たちを通して、キリストを知る知識のかおりを放ってくださいます。
Ⅱコリ11:31 主イエス・キリストの神、永遠にほめたたえられる方
ガラ1:4〜5 キリストは、今の悪の世界から私たちを救い出そうとして、私たちの罪のためにご自身をお捨てになりました。私たちの神であり父である方のみこころによったのです。どうか、この神に栄光がとこしえにありますように。
エペソ1:3 私たちの主イエス・キリストの父なる神がほめたたえられますように。
エペソ1:15〜17 私は主イエスに対するあなたがたの信仰と、すべての聖徒に対する愛とを聞いて、あなたがたのために絶えず感謝をささげ、あなたがたのことを覚えて祈っています。どうか、私たちの主イエス・キリストの神、すなわち栄光の父が、神を知るための知恵と啓示の御霊を、あなたがたに与えてくださいますように。
エペソ3:14〜21 私はひざをかがめて、天上と地上で家族と呼ばれるすべてのものの名の元である父の前に祈ります。
エペソ5:20 いつでも、すべてのことについて、私たちの主イエス・キリストの名によって父なる神に感謝しなさい。
ピリピ1:3〜6 私は、あなたがたのことを思うごとに私の神に感謝し、あなたがたすべてのために祈るごとに、いつも喜びをもって祈り、・・・感謝しています。あなたがたのうちに良い働きを始められた方は、キリスト・イエスの日が来るまでにそれを完成させてくださることを私は堅く信じているのです。
ピリピ4:6 何も思い煩わないで、あらゆる場合に、感謝をもってささげる祈りと願いによって、あなたがたの願い事を神に知っていただきなさい。そうすれば、人のすべての考えにまさる神の平安が、あなたがたの心と思いをキリスト・イエスにあって守ってくれます。
ピリピ4:19〜20 私の神は、キリスト・イエスにあるご自身の栄光の富をもって、あなたがたのすべての必要を満たしてくださいます。どうか、私たちの父なる神に御栄えがとこしえにありますように。アーメン
コロ1:3 私たちは、いつもあなたがたのために祈り、私たちの主イエス・キリストの父なる神に感謝しています。
コロ3:17 あなたがたのすることは、ことばによると行いによるとを問わず、すべて主イエスの名によってなし、主によって父なる神に感謝しなさい。
Ⅰテサ1:2 私たちは、いつもあなたがたすべてのために神に感謝し、祈りのときにあなたがたを覚え、絶えず、私たちの父なる神の御前に、あなたがたの信仰の働き、愛の労苦、主イエス・キリストへの望みの忍耐を思い起こしています。
Ⅰテサ5:16〜18 いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事に感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、神があなたがたに望んでおられることです。
Ⅱテサ1:3 兄弟たち。あなたがたのことについて、私たちはいつも神に感謝しなければなりません。(1:2 父なる神と主イエス・キリスト) 2:13
Ⅱテサ1:11 私たちはいつも、あなたがたのために祈っています。どうか、私たちの神が、・・・
Ⅰテモ2:1〜5 すべての人のために、また王とすべての高い地位にある人たちのために願い、祈り、とりなし、感謝がささげられるようにしなさい。・・・そうすることは、私たちの救い主である神の御前において良いことであり、喜ばれることなのです。神は唯一です。また、神と人との間の仲介者も唯一であって、それは人としてのキリスト・イエスです。
Ⅰテモテ6:14〜16 私たちの主イエス・キリストの現れの時まで、あなたは命令を守り、傷のない、非難されるところのない者でありなさい。その現れを、神はご自分の良しとする時に示してくださいます。神は祝福に満ちた唯一の主権者、王の王、主の主、ただひとり死のない方であり、近づくこともできない光の中に住まわれ、人間がだれひとり見たことのない、また見ることのできない方です。誉れと、とこしえの主権は神のものです。アーメン
Ⅱテモ1:3 私は、夜昼、祈りの中であなたのことを絶えず思い起こしては、先祖以来きよい良心をもって仕えている神に感謝しています。
ピレモン4 私は祈りのうちにあなたのことを覚え、いつも私の神に感謝しています。
□パウロ以外の記者による書簡に記録された祈り
ヘブル13:15 私たちはキリストを通して、賛美のいけにえ、すなわち御名をたたえるくちびるの果実を、神に絶えずささげようではありませんか。
ヘブル13:18〜21 私たちのために祈ってください。・・・永遠の契約の血による羊の大牧者、私たちの主イエスを死者の中から導き出された平和の神が、イエス・キリストにより、御前でみこころにかなうことを私たちのうちに行い、あなたがたがみこころを行うことができるために、すべての良いことについて、あなたがたを完全な者としてくださいますように。
ヤコブ1:17 すべての良い贈り物、また、すべての完全な賜物は上から来るのであって、光を造られた父から下るのです。
「光を造られた神」=「光(複数形)の父」(創造の神のタイトル)
ヤコブ5:14 あなたがたのうちに病気の人はいますか。その人は教会の長老たちを招き、主の御名によって、オリーブ油を塗って祈ってもらいなさい
Ⅰペテロ1:3 私たちの主イエス・キリストの父なる神がほめたたえられますように。
Ⅰペテロ5:10〜11 あらゆる恵みに満ちた神、すなわち、あなたがたをキリストにあってその永遠の栄光の中に招き入れてくださった神ご自身が、あなたがたをしばらくの苦しみのあとで完全にし、堅く立たせ、強くし、不動の者としてくださいます。どうか、神のご支配が世々限りなくなりますように。アーメン
ユダ25 私たちの救い主である唯一の神に、栄光、尊厳、支配、権威が、私たちの主イエス・キリストを通して、永遠の先にも、今も、また世々限りなくありますように。アーメン
□結論
以上の箇所を見てくると、「父なる神に祈る」というのが、聖書の教えであると言えるのではないでしょうか。イエス様は明確に父に祈るように教え、その教えを受けた使徒たちも明確に父なる神に祈っています。
同時に、ヨハネの福音書では「主イエス・キリストの名において」祈るように教えられています。また、もうひとりの助け主「聖霊」と祈りとの関係も気になるところです。
そこで次回のテーマは、「主イエス・キリストの名において」祈るとはどういうことか、そして3回目に「聖霊の助けによって」祈るとはどういうことか、をテーマにして聖書を見たいと思います。