2016年2月20日
わたしは、おまえと女の間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。」(創世記3:15)
■女の子孫の預言
創世記3:15は、聖書の中で最初に語られたメシア預言です。メシアは「女の子孫」から生まれるという預言です。聖書では家系を記すときは父親をたどるのが通例ですから、それをあえて「女の子孫」と言うのは、メシアが処女から生まれることを暗示しています。
この預言の中の「おまえ」は、サタンです。サタンは、メシアのかかとにかみつき、メシアは、サタンの頭を踏み砕きます。メシアも無傷ではすまないのですが、頭を踏み砕かれて滅びるのはサタンです。
■女の子孫の預言を受けて、サタンが実行した反撃
さて、人が地上にふえ始め、彼らに娘が生まれたとき、神の子らは、人の娘たちが、いかにも美しいのを見て、その中から好きな者を選んで、自分たちの妻とした。(創6:1〜2)
旧約聖書で「神の子ら」というときは、天使を指します。天使は大別すると、聖なる天使と堕天使(悪霊)です。ここでは、人の娘たちと雑婚していますので、明らかに堕天使です。霊的存在である天使が人間界に入ってきて女と雑婚することは、神の創造の秩序に反するからです。
雑婚の結果できた子どもたちは、「ネフィリム」と呼ばれる人間とも天使ともいえない生物でした。「これらは、昔の勇士であり、名のある者たちであった」と記されています(創6:4)。戦いなどにおいてすぐれた能力を発揮するのですが、全員が戦士ということは、女は生まれてこなかったということです。人類から女がいなくなれば、女の子孫、すなわちメシアも生まれてこなくなる、それがサタンのもくろみでした。
■洪水によって、ネフィリムは地上から一掃された
神は、堕天使と組んだ人類をさばき、ネフィリムを地上から一掃するために洪水を起こします。それもいきなりではなく、120年前に警告を発し(創6:3)、その間、信仰者ノアを選んで人々の前で箱舟を造らせたのです(創6:13〜22)。
創世記の系図によると、ノアはアダムから十代目です。アダムが生まれた年を第1年とするアダム暦では、洪水は1656年、警告が発せられたのはその120年前、1536年です。1536年当時、アダムの子セツの家系では、メトシェラ、レメク、ノアの3代が生きていました。そして、レメクは洪水の5年前、メトシェラは洪水の直前に死にました。「メトシェラ」という名前は、「彼が死ぬとそれがやって来る」という意味です。「それ」とは洪水のことだったのです。この預言的な名前をつけたのは、メトシェラの父エノクです。彼はアダム暦987年に天に挙げられました。新約聖書のユダの手紙14節では、エノクは預言者であったと記されています。
■堕天使(悪霊)たちはどうなったか
人の娘たちと雑婚した堕天使たちは、「永遠の束縛をもって、暗やみの下に閉じ込められました」(ユダ6節)。「暗やみの下」と訳されている単語は、ギリシヤ語で「タータラス」です。タータラスとは、いわゆる地獄の一部です。
■地獄とは
旧約聖書では、死者の霊魂が行く先である霊界をヘブル語では「シェオール」と呼びます。それは地の下にあると言われています。そして、信仰をもった義人も不信仰な罪人も共に、死んだらシェオールに下る、と教えています。新約聖書では、ギリシヤ語で「ハデス」、日本語訳では「よみ」とか「地獄」とも訳されます。地獄というと、どうしても私たち日本人は仏教的な地獄をイメージしてしまうので、以下では、「ハデス」という用語で説明します。
■ハデスには4つの領域がある
ハデスには人間の霊魂が死後に行かされる先として2つ、悪霊たちが行かされる先として2つ、計4つの領域があります。
まず、人間の霊魂が行く先は、信仰をもった義人が行く先と不信仰な罪人が行く先とがあります。前者は「慰めの場所」、「アブラハムのふところ」、あるいは「パラダイス」とも呼ばれます。後者は、「苦しみの場所」、あるいは単に「ハデス」と呼ばれます。
次に、悪霊たちが行かされる先には、一時的に悪霊を閉じ込めておく領域とそこに入れたら最後まで釈放されない領域とがあります。前者はギリシヤ語で「アビス」、日本語では「底知れぬ所」などと訳されています。後者はギリシヤ語で「タータラス」、日本語では「暗やみの下」と訳されています。以下では、「アビス」と「タータラス」という用語で説明します。
■イエスの勝利宣言
イエス・キリストは十字架で死んで、復活するまでの間、その霊魂はハデスに下りました。ハデスの中でも、義人が行く先であるパラダイスです。イエスがパラダイスから見下ろすとタータラスの領域が見えます。そこには雑婚した悪霊たちがずっと閉じ込められていました。彼らはかつて、女の子孫を生まれてこないように活動したのです。
イエスは彼らに「宣言した」と新約聖書が記しています。新改訳聖書は「みことばを宣べ伝えた」と訳していますが、原文には「みことばを」はありません。では、イエスは何を宣言したのでしょう。それは勝利宣言です。女の子孫の預言は成就し、メシアはその使命を果たしたと高らかに、勝利宣言をしたのです(Ⅰペテロ3:19〜20)
■タータラスに閉じ込めれている悪霊たちの最後は
将来、今の天と地が過ぎ去り、新しい天と新しい地が創造されます。そのとき、不信者たちに対する最後の裁きが行われます。不信者たちはハデスからよみがえり、永遠の体を受けますが、新しい天と新しい地に入ることはできません。彼らの行先は、「火の池」あるいは「ゲヘナ」と呼ばれる永遠の苦しみの領域です。
最後の裁きの時点では、火の池には既にサタンが投げ込まれています。不信者たちのあとには、死とハデスも投げ込まれます。ハデスの中にはタータラスがあり、そこには雑婚をした悪霊たちが閉じ込められているのですから、彼らもまた火の池の中に落ちるということです。(黙20:14)。